発酵食の要「麹」とは

2021年6月16日

麹は神様からの贈り物

奈良時代の古書『播磨国風土記(はりまふどき)』に「神様に捧げた蒸米(じょうまい)が濡れてカビが生えたのでそれで酒を造った」という記述があります。

米飯にカビが生えたものは古くから「加牟多知(かむたち)」と呼ばれ、「カビ立ち」を意味しました。
それが「かびたち」→「カムチ」→「カウチ」→「コウジ」となったのではないかと言われています。

昔の人は手間暇かけた「蒸したお米」を捧げることで豊作を願っていました。

その蒸米(じょうまい)に田んぼの周りにいる麹菌が繁殖してカビ(麹)が生え、
空気中の酵母とも反応してアルコール発酵したことから「日本酒」が出来上がったのです。

自然の育みの中でコウジカビが出来たということは、

神様がコウジカビをプレゼントしてくれたみたいですね。

昔の人々は「コウジカビ」を「神様の贈り物」として
神事などのお祭りごとの時に「御神酒(おみき)」としてお供えしてきたんですね。

昔の人はコウジカビが自分たちに害がない安全なものと知っていました。
コウジカビは悪さをしない優しいカビなんですね。

実際、現在使われている「コウジカビ」は、最近のゲノム研究からも毒素を作る遺伝子をもたない安全な「カビ」ということが証明されました。

コウジカビは「国菌」

日本の国歌は、君が代です。
日本の国花は、サクラです。

では、日本を代表する菌、つまり「国菌」があることをご存じでしょうか。

実は、2006年に日本醸造学会によって「コウジカビ」が日本を代表する「国菌」と指定されました。
サクラ、君が代、そしてコウジカビが、日本を代表しているのです。

麹菌の種類

そのコウジカビの中にはいくつか種類があります。

麹菌の種類
アスペルギルス オリゼー
黄麹菌(きこうじきん)といわれ日本の代表的な麹カビ
日本酒・米酢・味噌・みりん・甘酒などを作る際に利用されています。
コウジカビ

アスペルギルス ソーエ
醤油麹菌(しょうゆこうじきん)
醤油の製造の利用されています。

アスペルギルス アワモリ
黒麹(くろこうじ)の一種で九州の焼酎や沖縄の泡盛(あわもり)の製造に利用されています。
黄?きんより酵素パワーは4倍!力強い麹です。

アスペルギルス レペンス
かつお節を製造するときに利用されています。
かつおぶし菌ともいわれています。
かつおぶしは発酵食品の一つであり、世界一硬い発酵食品です。

国菌「コウジカビ」を「種麹」として、さまざまな「コウジ」を培養して、酒蔵や味噌蔵・醤油蔵に提供しています。

麹菌を育てる職業は平安時代からあったといわれています。
麹メーカーは日本に8社ほどと言われています。8社しかないのはびっくりですよね。
中には800年以上も続いているメーカーもあるんです。

麹メーカーも日本の伝統文化を支えているのですね。

麹から作られるもの

日本の発酵食品やお酒のほとんどにコウジ菌が使用されています。
原料     麹    製品

米     米麹    塩麹・米味噌・甘酒・清酒・みりん・米酢・米焼酎

麦     麦麹    麦味噌・麦焼酎

大豆    豆麹    豆味噌・たまり醤油

大豆・小麦   醤油麹  醤油

 

麹の好きな場所

麹菌は35度くらいの温度が大好き。
適度に暖かくて湿度のある日本が大好き。
空気中どこにでもいて、特に田んぼの周辺や自然豊かな野山が大好き。
麹菌は日本の気候が大好きで、日本と日本人が大好きです。
日本人も昔から麹が大好きだったのです。

「麹」か「糀」か?

麹は米に生えたら「米麹」、
麹が麦に生えたら「麦麹」、
大豆に生えたら「豆麹」といいます。

日本で一般的な「麹」の文字は奈良時代に中国から伝わりました。
中国では麦から麹を作ることが多かったので麦編を使っていました。

日本では米で麹を作ることが多かったので
江戸時代から明治時代にかけて、米の麹菌が出来ている様子を「米に花が咲いたようだ」という意味から「糀」という漢字を作りました。

漢字では「麦」編の「麹」と使って「上級麴士」ですが、日本の「コウジ」は「米」が大切なんですね。